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六号活字の欄

 夕食をしまって、純一は昼間見なかった分の新聞を取り上げて、引っ繰り返して見た。ふと「色糸」と題した六号活字の欄に、女の写真が出ているのを見ると、その首の下に横に「栄屋おちゃら」と書いてあった。印刷インクがぼってりとにじんでいて、半分隠れた顔ではあるが、確かに名刺をくれた柳橋の芸者である。 記事は...

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宿屋の方へ歩いている

 純一はぼんやりして宿屋の方へ歩いている。或る分析し難い不愉快と、忘れていたのを急に思い出したような寂しさとが、頭を一ぱいに填《うず》めている。そしてその不愉快が嫉妬《しっと》ではないと云うことを、純一の意識は証明しようとするが、それがなかなかむずかしい。なぜと云うに、あの湯本細工の店で邂逅《かいこ...

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真珠の根掛を掛け

 夫人は紺飛白《こんがすり》のお召縮緬《めしちりめん》の綿入れの上に、青磁色の鶉縮緬《うずらちりめん》に三つ紋を縫わせた羽織を襲《かさ》ねて、髪を銀杏返《いちょうがえ》しに結《い》って、真珠の根掛を掛け、黒鼈甲《くろべっこう》に蝶貝《ちょうかい》を入れた櫛《くし》を挿《さ》している。純一の目には唯し...

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